90年代のICT投資が日米逆転の真相。

1990年代の米国経済活性化について、経済学者の八代尚弘先生は「ICT関連投資を中心とした設備投資の高い伸びが、それ自体による需要拡大効果と、その成果としての労働生産性の高まりという、需要と供給の両面から高い経済成長を支えたためである」と評価され、日米の経済逆転の真相を理解する助けになります(自著『反グローバリズムの克服』新潮選書2014年刊66頁)。

解説によると、ICTの分野は日進月歩で発展するため、製造業のように企業内訓練で熟練した労働者を育成したのでは対応できず、外部から専門的な人材を調達することが不可欠。それには長期雇用保障に縛られず自由に産業間、企業間を移動できる流動性の高い社会インフラが必要(①)。

これが企業の情報化投資の拡大と結びつくことで製造業だけでなくサービス産業の労働生産性が大きく向上し、それが企業利益を増やすことで、1990年代の米国の持続的成長が実現した、と解かれます

また、生産プロセスも多くの部品を作る中小企業を系列化してそれらを大企業で組み立てる集中管理型でなく情報ネットワークを駆使した分散型の仕組みが効果的(②)、資金調達も銀行中心でなく、高リスク高リターンの投資先を求めるリスクキャピタルが豊富な金融市場が大きな役割を果たす(③)•••。

要するに、①ヒト、②モノ、③カネのすべての面で日本型と逆の仕組みが米国で有利に働いたという分析だ。日本の経済成長を支えた好要素が裏目に出て失われた二十年につながったと整理されたのですから、今後は成功体験こだわらず、切り替えろということになりますね。

それが日本人にとって、成功につながる選択なのか、幸せになれるかどうか、はまた別の話になります。