デジタル化された社会の生きにくさ

コンピュータ、情報の専門家、東工大の徳田雄洋先生の『デジタル社会はなぜ生きにくいか』(岩波新書2009年刊)を、その表題にひかれて読み始めました。

操作がわかりにくいし突然不具合が生じる「情報機器との格闘」、全体に責任を持つ管理者のいないインターネットに大量に蓄積される「情報の洪水」、その中で有害サイト、巧妙な詐欺、個人情報の流出、サイバー攻撃といった「リスク」にも曝される。

先生はこうした困難がもたらされる五つの理由を上げています。①ハードウェアの継続的成長、②ソフトウェアの絶え間ない変化、③知識伝達の不全、④社会制度の緩慢な対応、⑤ウェブサービスは無料が標準。

そして、改善による対応が可能という立場で、注意すべき「生きるための心構え」(例えば、半分信用しない、とか、依存しすぎない、など)を説かれるのです。

が、表題から想像したデジタル社会の生きにくさを見極めるといった私の問題意識には、技術への強い信頼といいますか、生きにくいけれど生き抜くしかないという科学者のやや楽観的にも見える確信が印象として残るのでした。