オランダの木はすごく単調なんですよ。

オランダの設計事務所で活動した吉村康孝氏が読書を語りながら(吉村氏他著TOTO出版『建築家の読書術』201頁)興味深い指摘をしています。

氏によると、干拓でできたオランダの国土は山がなく、風は常に一方向から同じように吹くし、地下水脈や地質も安定して差がない。そこに育った木は全然多様に見えない。枝振りまで同じ木が等間隔に並び、まるでCGの景色だという。

そこでは「自然」は多様性を生むのでなく、放っておくと均質化してしまうのだそうだ。そういう現実に対峙してオランダの建築家は「多様性」を最大化しようと試みる。

対照的に、地勢も季節も変化に富む日本の場合は、放っておくとバラバラになる現実があるが故に、多様性を死守するという議論になじめない•••

読者の私が面白く感じたのは、自然環境とそこに住む人々の意識の関係です。氏の仮説を敷衍すると、画一的でまとまりが重視されると言われる日本の社会は国土の多様な自然環境に由来するということになるのでしょうか。